今日は学園祭当日。
月子「今頃コウと小夜さんは学園祭か・・・」
病院にコウが来たときに学園祭に誘われたもの、体調が優れないので辞退したもののやっぱり気になる。
月子「あ~あ・・・こんなに気になるんだったらちょっと無理してでも行くべきだったかな」
なんとなくぼぉ~と夜空を見つめる月子。
その表情がふっと変化する。
月子「・・・今月に入ってもう何回目かしら」
日に日に強くなってゆく怨霊の気配。
今日もまた怨霊を退治するために夜の空へと消えていく月子。
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月子「ここは確か・・・コウの学校!?」
怨霊の気配を探りながらたどり着いたところは意外な場所であった。
学校からは生徒たちの声があちらこちらから聞こえてくる。
しかしそれは楽しげな雰囲気ではなく、悲鳴や助けを呼ぶ声であった。
月子「こんな学校の中で・・・いくわよカガチ」
いつもと変わらぬ怨霊の退治。
ただ、学校という場所だけが違ってはいたが、低級な怨霊相手にそれは問題にはならなかった。
月子「ふぅ・・・いつもの事だけど数が多いわ・・・でも問題にはならないか・・・」
何人かの生徒を助けたときであった。
教室の前には『生物部・寄生虫展覧会』というダンボールに紙を張っただけの看板があった。
月子「学校祭で寄生虫展覧会・・・いろいろあるものなのね」
一瞬、今日もしかしたらコウと行くはずであった学校祭のことが頭の中をよぎった。
月子「・・・」
生徒「た、たすけて~」
物思いにふける月子だったが、ふっと現実に戻る。
教室の扉を開け中へ入っていく。
その中に声の主がいた。
月子「これは・・・!!!」
1人の生徒を取り囲み、無数の蟲のようなものが教室の中を埋め尽くしていた。
それらは標本として展示されていた寄生虫に取り付いた怨霊であることを理解するのには数秒もかからなかった。
月子「そこを動かないで」
不気味に蠢く姿に動じることなく、まっすぐにその怨霊を太刀で切りつける月子。
いつもの怨霊たちのようにいとも簡単に切り裂かれ、闇へと還っていく。
月子「そこのあなた、早くここから離れな・・・」
そういって振り返った瞬間であった。
生徒と思っていた物体から無数の触手が伸び月子を取り囲む。
生徒「ピキャァァァ~」
月子「しまった!!!こっちが本体!?」
とっさに太刀でなぎ払う。
しかし切られたとたんに再生しそのまま太刀を取り込み月子の体に絡みつく触手。
月子「太刀が!!!」
武器を押さえられてしまった月子の腕に触手が絡みつく。
そこから次から次へと触手が体へと絡みついてくる。
月子「くっ・・・まずいわ体が・・・」
やがて体の自由を奪われてしまう月子。
月子「コ、コウ!!!助けて!!!」
最後に頭まで触手の中へと取り込まれてしまう。
さらに触手が絡みつき、教室の中心には球状の肉塊が空中に浮かんでいた。
そして空中に浮かんだ肉塊は地面の闇の中へと月子を連れ去っていくのであった。
『ずるっ・・・ずるるるっ・・・』
『にちゃにちゃ・・・・にゅるるる・・・』
薄暗い空間の中、粘液質な不気味な音が聞こえる。
その中心に気を失って倒れている月子がいた。
月子「・・・うっ・・・う~ん・・・」
肌全体を包む生ぬるい、ぬるぬるとした不快な感触で意識を取り戻す月子。
やがて目を開けるが同時に、異様な空間に悲鳴を上げる。
月子「きゃあああ!!!な、なに・・・?」
体をじたばたさせるが、何かが邪魔して身動きが取れない。
異常に気づき手足を見てみると、不気味な肉の塊にずっぽりと埋まってしまっていた。
月子「いやぁぁぁ!!!なっ・・・ど、どうなっているの!?」
混乱する頭の中で教室で怨霊に取り込まれてしまった様子が頭をよぎる。
月子『・・・どこか別の空間に囚われてしまったみたいね』
上下左右、空間全体が醜い肉の壁で覆われていて驚きはしたが、すぐにいつもの冷静さを取り戻す。
さらにその隙間からは口の付いた長い蟲のようなものが蠢いていた。
月子「教室にあった標本の寄生虫を寄り代にこの世界に具現化した怨霊・・・それにしても・・・」
普通の少女なら、目の前に広がる光景にただ悲鳴を上げるしかないだろう・・・そう思わずにはいられない醜い姿をした怨霊たち。
それが今まさに自分の体にぴったりと吸い付き、粘液を撒き散らしている・・・。
月子「刀がないわ・・・カガチ!!」
しかし反応がない。
月子「この空間は一体どうなっているの・・・」
どうやら今までの怨霊たちとは様子が違うようであった。
月子「でも、これくらいで私を捉えたつもりなの?」
指に力を込め、爪を立てて力ずくで触手や肉壁を切り裂こうとする月子。
しかし思った以上に肉壁に取り込まれた手足の自由が利かない。
肉壁が結界となり、また触手が月子の体中に絡みつき、力を奪っていた。
月子「くっ・・・こんな怨霊に・・・」
両足は肉壁や触手の口の中に飲み込まれ、両手も肉壁の中に取り込まれ身動きが取れない。
かろうじて動く左手を動かすにも、大量の触手相手ではまったくの無力であった。
『ちゅるっ・・・ちゅるるるるるぅぅぅぅ・・・』
口のような部位に吸われてしまっている足を抜こうとするが、より強い力で吸い返してくる。
月子「くっ・・・なんて・・・強い力で・・・」
さらに口の内部では無数の触手のようなものが足の指の間にもにゅるにゅると絡みつき月子を放そうとしなかった。
足の裏をなめられて少しくすぐったくもあった。
月子「はぁはぁはぁ・・・んぐっ・・・」